インド人はとっくに日本人より優秀。GDPなんて関係ないよっていう話


インドがすごいのは当たり前?

先日東洋経済の記事でインド人に関して、日本人と比べる記事が出ていた。
以下本文の一部を抜粋。

日本人は「インドに抜かれる必然」を直視せよ

未だに日本人には「日本経済は中国より上だったのに……」という感覚が少なからずあるだろう。なぜなら、それがあまりにも短期間で起きたからであり、もっと言えば、その状況をまだよく呑み込めてすらおらず、しかるべき対応が出来ていなかったからではなかろうか。

それと同じことが、これからインドによってなされる。にもかかわらずほとんどの日本人が、本音では「インドはわが国よりはるかに遅れた国」と思っているのではないか。「一部優秀な人はいるかもしれないが、国全体としてはまだまだ日本のほうが格上だろう」と思っているのではないか。まさに10年前に中国に対し、そう思っていたのと同じように。

著者の蛯原さんは直接の面識こそないものの、インドビジネスに関する知見という意味では日本人でもトップクラスの方だし、自分がインドで過ごしていた時から一方的に名前は伺っていた。それが理由というわけではないが、この記事に対して自分自身特別な驚きはなかったし、インドに行ったことor住んだことのある日本人であれば、この記事に書いてあることは当たり前にしか感じないのではないかなと思う。

一方でFacebookやTwitterでこの記事に対する日本人の人たちの反応(コメント等)を見ていると、どこかまだインドに対する誤解、偏見がぬぐい切れていないなと逆に危機感を感じさせられてしまった。考えが正しいとか間違っているとかは別として、事実を元に自分なりの感想をここに書き留めておきたいと思う。

事実としての圧倒的な「意識の差」

結論から言うと、日本人はインド人に意識面ですでに圧倒的に負けている。
特に「視野の広さと勝負に対するこだわり」、この2つの点で日本人とインド人には大きな隔たりがある。
それはものの見方とか、誰が言ったということに関わらず、事実としてそこにある。

GDP?人口?英語?インドの何がそんなにすごいの?

おそらくこの記事を読んだ方の大半は、インドと日本に関して「英語、GDP、人口、成長率」などマクロ的な観点からしか比較をしていない。これは記事のテイストの問題でもあるが、これだけではインドのすごさを一重に理解することはできない。誤解を恐れずに言えば、日本人でも英語を話せる人はいくらでもいるし、一般的なインド人が英語が上手いとはお世辞にも思えない。むしろインド人の英語訛りはどこの国に行っても、一瞬で聞き分けができるぐらい、アメリカ・イギリス英語とかけ離れている。(ニケシュにTOEICとか受けさせたらどうなるんだろう…笑)

インド人がすごいのは英語を話せるということではなく、英語を話すことに対して一切ためらいがないということ。

ただこれだけではインド人にとって英語を話せることが強みになっているとは言えない。ここでもう一つ重要なことは、英語がなければ彼らの仕事は成り立たないということである。インドでは教育現場、ビジネス、政治、あらゆる場面で英語を使うことを求められる。公用語としてはヒンディー語の方が割合は高いが、専門分野を身につけ、キャリアを積み重ねる上で英語はそもそも必須のスキルなのである。インドは州毎に「国が違う」と言われるぐらい、土地も、文化の幅も広い。だから彼らにとっては英語さえ通じれば、州をまたいで出稼ぎに出ようが、社会人になって海外に出ようが、それほど感覚的に大きな違いが無い。

日本人は言語を理由に海外にでたがらない人が非常に多いが、インド人にはその感覚があまりない。インドで一緒の寮に暮らしていた友人は、日本人の新卒が東京から大阪に赴任になったぐらいの感覚で、インドからドイツに赴任していた笑

この感覚はそのままビジネスの現場にも表れている。インド人の起業家の多くは、インドでビジネスをすることよりも、どうやってインド以外の国でお金を稼ぐかということに焦点を充てることが多い。実際ここ20年間はアメリカや欧州の下請け産業(BPO産業)でインドのGDPは伸びてきている事実もある他、インド企業の多くが本社or営業所をアメリカやシンガポールに早々に移転する傾向がある。言語の壁がないことで、彼らの視野は日本人に比べてはるかに広い状態からスタートしていると言える。

意識が高い?いやそんなこと言ってたら死ぬって

記事の中でIIT入試倍率が50倍という話があったが、その数字自体にはそれほど意味はない。それよりもインド人が恐ろしいのは、教育に対する異常すぎる熱の高さにある。IITの主席合格者は毎年インド政府から表彰を受け、地方の町ではIIT合格者が同地域から一人でも出ると、その地方誌に合格した学生の名前が高々に掲載され、町民総出で合格を祝う。その一方で子供をIITに入れようと家と土地を担保に借金を重ね、子供がIITに落ちたことで破産したなんていう話も都市伝説ながばに流れている。

インドでは人口が増えすぎて、現状でも仕事の需要に対して供給は一切追いついていない。先日、インドのとある地域で出た地方公務員の募集では、募集に対して4万倍の応募がきたなんて話すらある。この現状を理解した上で本気で上を目指す努力しなければ、ただでさえカーストの名残で職が手につかないインド人は、いつまでも恵まれない生活を送ることになる。

実際のところを言えば、だからといって全てのインド人が優秀というわけでも全然ない。IIT卒業生で勉強はできても、仕事はできないなんて人がいるという話を小耳にはさんだりもしている。大手IT企業ではプログラミング言語のほんの一部(xhtmlだけ等)しか書かない仕事が多く、10年経ってもスキルがまったく身についていないなんて人もいくらでもいる。

ただそんなのあくまで仕事ができる、できないかの話でしかない。彼らが本当に恐ろしいのは、そういった自分の経歴や能力を転職時にはるかに盛って、当たり前のように自分をキャリアアップさせていく「結果に対する貪欲さ」にある。自分の成功のためなら手段は選ばない。日本人の中にはそんなのズルだという人もいるかもしれない。しかし彼らにとってはその場で成功をつかむことこそが勝負であり、そこでどんな手段を使ってでも勝たなければいつまでも上にはいけないのだ。

優秀なビジネスマンである前に一流の勝負師。インド人にはそんな共通意識がところどころに垣間見える。だから海外に出ても交渉だろうが、営業だろうが圧倒的な勝負勘と勢いで相手を押し切っていく強さがインド人にはあるように感じる。そしてそれを作り出している根本が、前述した壮絶なる教育競争社会にある気がしてならない。もちろんこれはこれでインドにおいて大きな社会問題になっているのも事実なので、一概に肯定することはできないが、今後日本人と一緒に働くエリートインド人たちは、少なくともそのような競争社会を生き残り、狂気じみた勝負勘を持っていることは事実として頭に入れておくべきだと思う。

インド人と手を取り合う?いや取ってくれないっしょ

今回の記事の感想を見ていると、「インドに抜かれる?GDPだけの話でしょ?」、「インドと競争するのではなく、どうやって手を取り合うか考えるべき」、「インドは人口が多いんだから優秀な人がいて当たり前」みたいな感想が日本の著名人やビジネスマン?を中心に広がっていました。

いや、違うでしょ笑

確かに今はインドよりも日本の方が世界の立場的には上かもしれない。でも今後インド人が様々な場面で活躍してきたとき、彼らは今と同じように日本人の価値を見出してくれるでしょうか?世界で勝つために手段を厭わないインド人と、世界の人々とどうすれば仲良くできるかを考える日本人。その意識の差は将来的に大きな軋轢を生み出すとか思えません。スポーツで言えば本気でプロを目指している選手と、サークルで楽しくワイワイやる人ぐらいの意識の差がある。

この圧倒的な意識の差を、人口が10倍いるっていうだけで結論付けてしまうのでしょうか??

このまま順当にいけばインド企業は世界のビジネスシーンでどんどんその価値を高めていくはずです。そうなったときに結果に対して貪欲になれない日本企業をインド企業は相手にしてくれるでしょうか。ここ数日話題になった新幹線の話題も、いつのまにか遠い昔話になってしまいそうな気しかしてなりません。

問題解決に対して本気になれない日本人

もしこの記事を読んでインドは人口が多いからという感想しか考えていないのであれば、正直思考が浅いし、話の論点が見えてなさすぎ。それなのに日本では、今の若者が挑戦しないと「さとり世代」批判が繰り返されたり、企業が結果を出そうと必死になれば世論はブラックと言って議論を隅に追いやってしまう。「この問題を絶対に解決する」という、結果に対するこだわりはどこへいってしまったのだろう…

もし今後日本のビジネスシーンでもっと英語が使われたり、それこそ日本が移民の受け入れでも始めたあかつきには、どっと優秀なインド人が日本にやってきて、日本の価値あるポジション(年収1千万以上の中間職)をごっそりインド人に持ってかれるなんてことだってあるかもしれない。今後、自分世代の日本人にとっての本当の脅威は、今周りで輝いているように見えるエリートや起業家たちと競い合うことではなく、結果に超絶貪欲な同世代のインド人たちが自分たちと同じフィールドに来て、一緒に働かないといけなくなったときだと思う。

今の日本人は一言で言えば「マーケット感覚」が無さすぎ。「GDP以外にインド人に抜かれるものが思いつかない」と本気で思っているのなら、1週間でもいいからインドに自分で足を運びその現実を見てきた方がいい。狭い日本の世界に甘えて自分達自身の価値を磨き続けることをしなくなったら、日本は本当の意味で世界から取り残されてしまう。そういう意味で、自分と同じ世代の人たち(特に将来世界で働きたいと思っている人)にはできる限りこういう現実をインドに行くなり、どこか日本の外に出るなりして自分の肌で感じて、将来に危機感を持ち、結果に貪欲になって、目の前のことに取り組んでもらえればなと思います。

Back to top